『土徳の世界』 『土徳の世界』
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『土徳の世界』

 

「望郷」推薦コメント

四宮鉄男(記録映像構成者)

前作の『土徳』では、青原監督の父親と家族の「ヒロシマ」が語られていた。
『望郷』では、地域に住んでいる人たちの暮らしの中の「ヒロシマ」が語られる。
語り部でない人たちの61年目の語りは、鮮烈で重かった。
原爆孤児と言われたくなかった人や被爆者手帖をもらいたくなかったという人たちが、
ずっと心の中に抱きかかえてきた思いを吐き出す。
私は、平和公園や慰霊祭には今も足を運びたくないと語る人の言葉に衝撃を受けた。
「ヒロシマ」という物語は、エンドマークなしにずっと続いているんだなと、改めて思わされた。


川本隆史(東京大学教員・社会倫理学)

真宗僧侶の父親の足跡をたどった監督デヴュー作を観て、
「土徳」(=地域社会の恩恵)という含蓄あることばを教わった。
今回の作品は、広瀬小学校の旧学区の「土徳」を掘り起こそうとするもの。
1945年4月の学童疎開、被爆、そして2004年8月の慰霊碑建立までが縦軸、
十数名の卒業生の戦前・戦中・戦後の暮らしが横軸である。
「原爆で消された記憶が一歩一歩着実によみがえって」いく過程に心うたれる。



「肉体を取り戻す地域の記憶」 鎌仲ひとみ(映像作家)

原爆を体験した土地、広島は例え百万回の言葉で語られても
その内実を語り尽くすことが出来ないのかもしれない。
しかし、この映画は喪われようとしていた記憶に肉体を与え、
これまでのステレオタイプの表現から離陸して固有の体験を
その1人1人のキャラクターと共に蘇らせることに成功している。
広瀬小学校の生き残った人々が語る戦後は広島という特殊な土地に起きた悲劇から
いかに人間が回復したのかの記録であり、
また同時に形として喪われた街にかつて生きていた肉親たちを呼び戻す営みでもある。
彼ら、彼女らは語る、そのことがそのまま死者への愛であり、彼ら自身の癒しにもつながる、
そんな貴重な仕事をこの映画作家は例えようもない優しさで行った。
広島を記録する比類ない内面的な深度を持った作品。



東琢磨(音楽評論家)

ゆっくりと低い声で語られる、ヒロシマのとある小学校の記憶と歴史。
映像も非常に丁寧ではあるが、虫、子どもの声、
おじいさんたちとおばあさんたちの広島弁の語り…
さまざまな声や音が聞こえてくる。
目をつぶって聴いてほしい、
耳を澄ませて見てほしい映画だと思います。

(敬称略・順不同)

 
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