安芸国人・聞き撮り日誌

2003年4月から2004年3月までは上映会随想記へ 
 
2004年 序文 4月 5月-1 5月-2 6月-1 6月-2 7月 8月-1 8月-2 9月-1 9月-2 10月
 

安芸国人・聞き撮り日誌・5月第二章


●2004年5月8日 歓喜寺の花祭り  広島市安佐南区祇園町 青原地区



昨日の午後から、青原地区の参詣者がポツポツ訪れた。









みんな空のペットボトルや一升瓶を二本づつぐらい持参しやってくる。
300円で甘茶をわけてもらうのである。
甘茶がお客さんの空き瓶に注がれると
御釈迦さんの身体にもかけながら注ぎ足してゆく。


 
周知のとおり花祭りは、4月8日・御釈迦さんの誕生日である。現在は新暦なので1月遅れで催されている。
ところが花御堂の屋根には、「薬師如来」とナンテンの実で記し、この祭りのことを「薬師如来縁日」と呼ぶ。御釈迦さんの誕生日なのに何故だろう。歓喜寺の本尊が薬師如来だからそういわれているのであろうが、それにしても不思議である。
ひょっとしたら、甘茶という薬草系の葉を煎じて飲む祭りだから「お薬師さん」なのだろうか?


午後1時、浄土真宗の勝想寺住職が勤行にこられた。
村の人が管理し、現在無住である歓喜寺は、かつて真言宗だった。近年まで真言僧侶の方が出仕されていたそうだ。
護摩壇の跡らしい前に浄土真宗の住職が座し読経する光景はめったにみられずおもしろい。




みんなが寄り合い、花を自然から直接採取し、美しい花御堂を作り、 甘茶を各自がいただく。
かつては、境内に出店も多く出て、大変な賑わいであったという。

花御堂に記された「縁日」という文字がなにかこの行事の大切さを訴えかけているように思えた。
             



                         

 

●2004年5月17日 牡蠣打ち剥き身作業  広島県廿日市市地御前

4月に神田三亀男先生からお聞きした話のなかで「真宗門徒は、移民が多い」ということが気になっていた。
牡蠣の産地で有名な地御前(じごぜん)には、そういう門徒さんが多くおられると聞き訪ねてみることにした。
地御前は、広島市の西南・廿日市市にある。かの宮島の近くである。

広島電鉄地御前駅を降りて少し歩くと、
久しぶりに潮の匂いして心地よい。
地御前漁業協同組合についた。
港に並列してたくさんの加工場が建ち並び、 手前にはホタテ貝に針金をとおした垂下連が山積みにされている。



峠(たお)水産の峠茂男さんをたずねた。峠さんは、知り合いのお寺・西向寺の門徒さんである。峠さんが、加工場を案内してくれた。パートの女性たちが、剥き身作業をテキパキ進めている。



















広島の牡蠣は、剥き身作業に「牡蠣打ち」という道具を使う。
三陸はナイフだそうだ。
地御前かきは、むき身で年間約1,000トン生産され、全国に出荷されている。


峠さんがいった。

わしは牡蠣はじめてからおおかた40年。昭和30年頃、学校卒業して跡継いだんよ。
昔からわしのおやじもやりよったけえ。
昔はまあ貧しかったんよ、地御前村ゆうてから、後ろはみな山じゃけえ田んぼなんかなかったろう。ほんで漁してもあれじゃったから、みなハワイとか移民、働きに行きよったよの。
逆に
いま地御前に牡蠣打ちに仕事来る人は、フィリピンとか中国の人が多いよの。出稼ぎに来とってんよの。
じゃけえ昔の地御前の反対みたいな感じよの。

うちらの曾じいさんとかハワイに行っとったけえの。ハワイもお寺があるじゃん。ハワイでもホノルルでも浄土真宗のお寺があるよの。うちらは、西向寺の門徒じゃけえ、若葉会とか女の人の集まりがあったり、けっこうお寺とのつながりは深いよの。
  ●2004年5月24日 牡蠣収穫作業  広島県廿日市市地御前

峠さんから、牡蠣の収穫は、5月いっぱいまでやっているよと言われた。どうしようかと躊躇したが、お邪魔することにした。というのは収穫は、朝5時に出港するからだ。その時間には電車もバスもない。自転車で行くことにした。私の住む西原からだと大変なので、実家・真光寺に泊まり朝3時30分頃出発した。まだ暗い国道2号線をママちゃりでエッチラオッチラ。やはり1時間半はかかり、ちょうど午前5時地御前に到着した。





港に美しい朝日が昇る。








かきの養殖は室町時代、安芸国で初めて行われたといわれ、
廿日市での養殖は、
文久元年(1861)頃に始まったと伝えられている。



地御前の牡蠣ゆうのはの、江戸時代から続いとるんよ。昔、わしのおやじは、じまき方式でやりよった。?(ひび)って、イカダの竹じゃなくて枝のあるやつよ。あれを浜へ立てて、そいでそれに自然と牡蠣がつきよった。そいで重みで浜へ牡蠣が落ちるじゃろ、それが成長して段々大きうなったのを集めてこうやりよった。竹にはなにも使わん。ホタテを使い出したのは、戦後、イカダ方式になってようの。



峠水産の牡蠣イカダは約30台。
この日、イカダから牡蠣のついたホタテ貝の束・垂下連を六つ引き揚げた。
イカダ一台に約600本の垂下連があり、
全て揚げるのに一週間かかるそうだ。
11月の終わりごろから始まり5月いっぱいまで、
7ヶ月収穫作業が続く。




















今日なんか楽よ、気候がええし、太陽も出とるし。
1月2月ゆうたら、暗いけえライトつけてから仕事する。
雪が降ったり、寒い日も毎朝出るんじゃけえねえ。
寒いけえね、ほんと。出るんがいやになるようなよ。