安芸国人・聞き撮り日誌

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安芸国人・聞き撮り日誌・9月第一章

青原地区が支えてきた大年神社と歓喜寺

●2004年9月1日 八朔の祭り 広島市安佐南区祇園町青原地区
 
一般に「朔」とは一日のこと、旧暦の八月一日を「八朔」といって早稲米の初穂を刈って神にささげ、近づく台風の季節を無事にのりきって、来る稲刈りの豊作を祈願する日だったといわれている。
青原地区の八朔は、9月1日。おそらく旧暦から新暦に移行した時に、「一月遅れ」にしたのであろう。大年神社では、7月の田休みと同様「湯立て」でが行なわれた。

当番の岡野さんが、湯立てで使うカルカンを作る。
「わしゃあ、よう覚えとらんのじゃが、こうでええんかいの」
といいながら手際よく、縄をないはじめた。















  後で聞くと、大年神社の年中行事は、年4回行なわれ、私が見ていない「秋祭り(10月)」「狐兎(4月)」もすべて湯立神事だそうだ。「稲作農耕」の周期と関わる行事ばかりのようである。











               

では歓喜寺の行事は、どのような意味合いで行なわれてきたのだろうか?
境内にお宮とお寺が共存する大年神社と歓喜寺。
「神」と「仏」への信仰を土地の人はどのように区分けしてきたのか。
疑問は深まるばかりである。


                 【青 原 地 区 ・ 年 中 行 事 表】

 

大  年 神 社

歓  喜  寺

 1月 

元旦         歳 旦 祭

元旦        初 参 り

 

 

17日、18日   観音縁日

 2月

 

3 日        節   分

 3月

 

 

 4月

20日        狐   兎

21 日       大師縁日

 5月

 

7日、8日    薬師如来縁日 (花祭)

 7月

第一日曜日    田   休

 

 8月

 

9日、10日   四万八千日

 9月

1日         八  朔

 

 10月

19日前後の日曜日    秋 祭 り

秋祭り翌週  安芸津彦神社へ提灯奉納

 11月

 

 12月

 

大晦日     除夜の鐘     〜初参りヘ

●2004年9月7日 台風18号上陸 広島市安佐南区祇園町青原地区




広島は台風がそれほど直撃する所ではない。
しかしこの日は凄まじかった。








境内は木々の葉っぱが散乱した。





























こうしたコツコツとした些細な営みが









五百年以上の歴史を培ってきたのだなと思った。









 

青原地区・ため池の恩恵

2004年8月29日 ため池草刈    広島市安佐南区祇園町青原地区



武田山の裾野、青原の集落のはずれに、四つのため池がある。
8月末に地区の共同作業である池の掃除があるというので訪ねた。







最も古い1号池は、江戸時代からあったといわれている。







2号池と3号池の間に「武田山憩いの森」という市営の公園があり、池とともに「憩いの森管理組合」が維持している。






雑草が生い茂る毎年、6月と8月に二回、草刈が行なわれる。
組合員は、すべて青原地区の人なので、村人総出の共同作業となる。






ため池は、村の田畑に使う農業用水で青原地区の生命線である。





組合長の三上さんに話を伺った。
三上 この作業はね、昭和35年ぐらいからやりよる。
    ほんじゃけえ古いよね。 以前は、そこまで掃除をせんでも牛を
    飼うとったり馬を飼うたり、草を肥料にしよったけえ、みんな自然   と刈りよったわけよ。
    今は機械化になっとる。牛を飼わんから、草刈らんから、しょう   がないからこうやってます。

青原 じゃあ結構みなさん牛をもたれてた。
三上 ええ。牛は多いかったですよ。馬もおる。馬は山本地区が多いよの。青原には馬飼うとったのはおって    んないかもわからんのう。 牛の方が多い。
    耕作する場合に使う。木を出すのに使う。いろんなことでね。ほいて昔は肥料がないけえ、
    町の方へ下肥ゆうんか、人間の糞を樽でもって帰ったら、それをひかづらして帰る。
    でここで草刈ってもって帰って牛に食べさせす、肥料にする。それとか畑の中へ入れこんで梳くとか、
     また夏に乾くから、水分が逃げんように野菜の根元へ積んだりするわな。
    だから昔は、こんなに決めて草刈しなくても きれいになりよったんよ。
    (側にあった倒木を指し)こうよな木でもきれいにないようなりよったんよ。
    クドへ焚く、風呂へ焚く、いろんなことへ。それがプロパンが出る、電気が出来る、それで使わんようになる。
    こういうふうに汚うなるゆうことよね。

 


●2004年9月9
日 セリの苗取りと仕込み  広島市安佐南区祇園町青原地区



9月に入ると青原の主要な産物・セリの苗取りと仕込みが始まる。








セリの苗場。セリは水田で栽培される。






抱きかかえるようにしてそのままひきぬく。






古田さんが言った。
「セリは昔から、水がきれいなとこがええ。デミゆうんじゃが、湧き水が、よう出るところがええんよ。ああいいう所がセリを作るのに向いとるわけよ 」






とった苗はため池につけ、 水藻のように拡げて浮かべる。
苗に根を出させるためである。








約一週間後。苗を引き上げると白い根が出ていた。
この根が水田に根付くそうだ。






 


     






池から引き上げた苗は、さらに筵を被せたり、家の日陰などに置くなどして、10日間ぐらい寝かせておく。生えてきた根の成長を少し弱らせるためだそうだ。






●2004年9月20日 セリの植え付け  広島市安佐南区祇園町青原地区


池から引き上げ10日たったセリ苗。
白い根がずいぶん生えている。








苗を積んだタライをひきながら、植えつける水田へ運ぶ。昔、深田の稲刈りで使われていた「田舟」を思わせる。










間隔をあけて落とすように植えつけていく

















 



これから収穫まで約1ヶ月。セリの出荷は、正月から2月にかけてが最もピークだそうだ。            






この取材をした時期、土井さんが、素足で泥田に入って苗とり作業をしておられた。

土井 冬が一番売れるんです。量が足らずに、正月前なんか手間がないけえ、    ようとらんけえ、高い値で売れるんじゃがねえ。 200円ぐらいで売るから、   かなり1ケースが1万円あまりするような格好になるんです。
    したらそれを30ケースぐらい出そう思いよるんじゃが、雪降ってペッシャ
    ンコになったらもう駄目です。わからんです。降る年も降らん年もあるん
    じゃが、降らんとぬくかったら、安かったりね。寒かったりしたら値がええ    んですよ。水炊きとかすき焼きとかになるから。
   集荷組合でみんなしてなんするんですが、人手が足らんのですよ。
   なんぼでも出してくれえゆうて、足らんから。
   今、年寄りが多うなって、やねこいし(やりにくいし)、みんな、賃貸料がようけ入るけえ、こうなん問題にしちゃあ   おらんのじゃ。マンションとか、駐車場やらなんやら。よけえ、ああな人がおってんですよ。やめるじゃのなんじゃ   の、ああなのでセリやる人がおらんようなって、私らみたいなのが年をとってしょうがなしにやりよるぐらい。若い   者はやらんし。

               


セリの苗とりから植え付けまでの一連の作業をみて、その細かさと丹念さに驚いた。なんでも池につけて植えるのは、青原地区だけでそうである。私がこの作業に魅力を感じた一つは、全てが手仕事で行なわれていたからだと思う。